第119章

奥の個室から菊地社長の怒号が響き渡り、続いて慌ただしい物音が聞こえてきた。

鈴木夏美がホテルの入口に辿り着いたところで、慌てて駆け寄ってきた中野莉子に腕を掴まれた。

「菊地社長を機嫌よくさせてくれたら、歩合なんていくらでも出すわ」

中野莉子は明らかに覚悟を決めていた。この取引で一銭も稼げなくても、大口顧客を失うわけにはいかなかった。

鈴木夏美は腕を胸の前で組み、眉をひそめて彼女を見た。

「あなたの言う契約交渉って、寝ることしかないの?だったら、やめておくわ」

「わかってる?こんなチャンス、どれだけの人が欲しがってるか」中野莉子はこの話をするのが不名誉だと知りつつ、ため息をついた。...

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