第151章

黒幕は彼女のためにこれほど大掛かりな手を打った以上、彼女が逃れる可能性は皆無だった。

今日でなくとも、いずれ別の機会に罠にはまるだろう。

鈴木夏美は無理やり落ち着かせた。袖の内側には軍用ナイフが隠されている。手首の縄さえ切れば、逃げ出せる可能性はある。

彼女はトランクの中で体を丸め、できるだけ音を立てないよう動きを抑えながら、手を後ろに回して袖の中の小さなナイフを掴もうとした。

額に汗が滲む。鈴木夏美は全力を尽くしてナイフを手に入れ、片手で開き、少しずつ手首の縄の束縛を解いていった。

繊維が切れる感触とともに、鈴木夏美は微かに唇の端を上げたが、縄が大半切れたところで動きを止めた。

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