第160章

海の中で長時間息を止めていたため、鈴木夏美は五感がぼやけ、気を失いそうになっていた。

しかし彼女は耐えるしかなく、大きく息をすることさえ恐れていた。

船室にはすぐに捜索の者が入ってきて、二人は目配せをしながら船室内を一分ほど調べたが、何も見つからなかった。

二人は目を合わせると、一緒にキッチンの方へ泳いでいった。

中の空間はあまりにも狭く、人が隠れられるような場所はまったくなかった。食器棚さえも押しつぶされて変形しており、一目見渡すと大きな桶が一つあるだけだった。

一人が中に泳ぎ込み、躊躇なく桶の蓋を開けた。

鈴木夏美は隣にいる人の気配を感じ、呼吸さえも重くなった。

「くっそー...

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