第163章

不眠不休で鈴木夏美の行方を探し続けた高橋隆一はついに倒れてしまった。

医師が彼の胸の傷を診察し、少し舌打ちした。

「本来なら致命傷ではなく、長い療養は必要ないはずですが、海水による汚染で感染を起こしています。発熱は正常な症状です」

高橋隆一はこれまで治療を先延ばしにしていた。もし他の場所の怪我なら田中健太もそれほど心配しなかっただろうが、これは胸部、心臓に近い場所だ。ちょっとした不注意で感染症で命を落としかねない。

彼は柔らかいベッドに沈み込み、発熱で頬は真っ赤に染まり、頭はぼんやりとしていた。

「夏美ちゃん、戻ってきたのか?」

高橋隆一の意識は朦朧としており、鈴木夏美が無事に戻...

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