第171章

海外へ行ってしまえば、二人は完全に会えなくなる。

鈴木夏美は突然、自分の行動がとても残酷なものに思えてきた。

彼女は真野雅子が無事でいるのを見ることができるのに、自分がまだ生きていることを伝えることができない。

ガラス窓の向こうで、真野雅子は目の前のケーキをぼんやりと見つめ、虚ろな眼差しを向けていた。

泣き疲れたのか、乾いた目からはもう一滴の涙も流れ出なかった。

鈴木夏美は胸が刺すように痛み、思わず一歩一歩とガラス窓に近づいていった。少しでも彼女の近くにいたかった。

真野雅子は力なく顔を上げ、焦点の合わない目で茫然と前を見つめていた。

鈴木夏美は、「もしかしたら夏美ちゃんは一時...

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