第174章

丸一晩、どんな治療を施しても、彼は意識不明の状態が続いていた。

プライベートドクターは頭を抱え、髪の毛が全部抜けてしまいそうなほど憂いていた。

高橋隆一はまるでブラックホールに吸い込まれたような感覚に陥っていた。周りは虚無の闇、目の前には鈴木夏美がゆっくりと遠ざかっていく姿だけがあった。

目の前の人を見つめながら、高橋隆一の胸に鋭い痛みが走る。

「夏美ちゃん、僕を置いていかないで」

彼はその場に立ち尽くし、一歩も踏み出せず、ただ鈴木夏美が去っていくのを見るしかなかった。彼女の横には別の男の影が現れていた。

二人の親密な様子に、高橋隆一は血を吐きそうなほど怒りに震えた。

夢から飛...

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