第175章

「人はまだ生死不明なのに、何の補償の話をしているんだ？」

真野雅子は彼を見るだけで腹が立った。

夏美ちゃんが彼に優しくしていた時は見向きもしなかったくせに、今になって彼女が去ると決めたら、急に追いかけてくる。

これが「手に入らないものが一番欲しくなる」ということなのだろうか。

高橋隆一は彼女が簡単に折れないことを知っていた。珍しく怒ることもなく、一言も反論せず、静かに彼女の不満を聞いていた。

これは全て自分が受けるべきものだ。結局、彼は夏美ちゃんを裏切ったのだから。

「彼女が無事に戻ってくるなら、何を犠牲にしてもいい」

彼の眼差しは真剣で、これらの出来事でかなり苦しんできたこと...