第176章

藤原朝子はため息をつき、自分の病状について何の希望も抱いていなかった。

「隆一、この頃ずっと夏美のことを考えてしまうの」

そう言いながら、彼女の頬に涙が伝い落ち、とても苦しそうな様子だった。

高橋隆一はベッドの傍らに立ち、冷ややかな目で彼女を見つめていた。慰めの言葉をかけるつもりはなかった。結局のところ、これは彼女が自ら招いた結果なのだから。

「私は夏美に悪いことをした。自分の娘を口から捨てるなんて。でも、あの時は、どうしようもなかったの。どんな選択が正しいのかもわからなかった。ただ、白石昌治には白石知子という一人娘しかいなくて、私が自分のことだけを考えて知子を死なせたら、どんな顔を...

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