第177章

長尾家別荘、鈴木夏美は携帯のフォトアルバムを見ていた。

携帯には彼女と高橋隆一の2人きりの写真がほとんどだった。

以前、二人が甘い時間を過ごしていた頃は、彼女が隆一を引っ張って一緒に写真を撮っていた。しかし関係が崩れ始めると、フレームから彼女の顔が消え、高橋隆一の姿だけが残るようになった。

その頃、二人はほとんど会話もなく、鈴木夏美が写真を撮りたくても、彼の慌ただしい背中か横顔しか捉えられなかった。

かつては甘く幸せな思い出だったものが、今では彼女の胸を刺す刃物のように感じられ、心を血まみれにしていた。

もう離れる決心をしたのだから、これらを残しておいても自分を傷つけるだけだ。

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