第178章

電話はすぐに繋がり、向こうの声は疲れていた。

「早く言え、時間を無駄にしたくない」

鈴木夏美についてのわずかな手がかりを得た高橋隆一は、花を送った人物を追跡したが、どんな痕跡も見つけられなかった。

ネット注文だったため、相手の現住所は一切わからず、残された電話番号さえも使われていない番号だった。明らかに相手は高橋に手がかりを残すつもりがなかった。

黒田順也は長尾久行が去った方向を見つめながら、半ば冗談めかした口調で言った。

「夏美さんが今どこにいるか知りたくないなら、電話切ってもいいぞ」

高橋隆一は一瞬沈黙し、やっと重い口を開いた。

「さっさと言え、借りを作ってやる」

二人は...

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