第179章

海面は波立ち、四方を見渡しても建物らしきものは一切見えず、ただ青い海が広がっていた。

鈴木夏美は以前にも船に乗った経験があり、その時は何の症状もなかったのに、今回はひどく船酔いに苦しんでいた。

彼女は船の手すりに寄りかかり、優しい海風が髪を撫でていた。

鈴木夏美は必死に目を開こうとしたが、海水を見た瞬間、また激しい目眩が襲ってきた。

力なく頭を垂れると、海面から漂う潮の香りが彼女の気分をさらに悪くさせた。

あれだけ島での生活に慣れていたのに、どうして今回は適応できないのだろう?

「こんなに反応が大きいとわかっていたら、少し手間がかかっても、水路は使わなかったのに」

長尾久行が彼...

ログインして続きを読む