第181章

長尾久行は眉をひそめながらも、落ち着いた表情で言った。

「お姉さんには自分で選ぶ権利がある。君が彼女を強制することはできない」

「もしお前がいなければ、夏美ちゃんが俺から離れるなんてことはなかったはずだ」

高橋隆一が一瞥を送ると、田中健太はすぐに意図を察し、ゆっくりと長尾久行に近づいていった。

鈴木夏美の感情はほとんど崩壊寸前だった。震える両手で、自ら高橋隆一の腰に抱きついた。

「これは私たち二人のことだから、彼を巻き込まないで」

「お前が連れ出そうとしたんだ。俺が簡単に許すわけないだろ」

二人の関係がここまで悪化していても、高橋隆一は彼女のすがる姿に満足げだった。

どんな卑...

ログインして続きを読む