第183章

腕の中の人の息遣いが次第に弱まっていく。高橋隆一は必死に彼女を岸へと引き上げた。田中健太にデッキへ引き上げられると、その場に崩れ落ちた。

鈴木夏美の顔色は紙のように青白かった。彼女はかすかな意識を残したまま、船に運ばれるとそれも完全に途切れた。

死のうとしていても、彼は決して許さない。

「夏美ちゃん」高橋隆一は震える手で鈴木夏美の鼻先に触れ、微かな息を感じると安堵の息をついた。

「もう一度僕から離れていくのかと思った」

「これがお前の言っていた彼女を守るということか?」

長尾久行がいつの間にか部屋から飛び出してきて、床に倒れている鈴木夏美を見ると、いつもの穏やかな表情が一瞬で崩れ...

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