第188章

鈴木夏美は頷いた。彼女は立ち上がり、遠くの生い茂った花畑を見つめた。

すべてがこんなにも絶妙で、彼女の高橋隆一に対する嫌悪感さえも幾分和らいでいるようだった。

夜は静かで、二人は手を繋ぎ、周りには一面の花畑と小さく輝く蛍。目の前の景色はまるで一枚の絵のように美しかった。

高橋隆一が何か言おうとした瞬間、ポケットの携帯が鳴り始めた。

せっかくの二人きりの時間を邪魔されたくなかった彼は、携帯の電源を切ろうとしたが、彼女の手がそっと抜け出した。

鈴木夏美の顔に感情は見えなかった。

「出なさいよ。待たせないで」

着信画面には田中健太の名前。高橋隆一は少し離れて電話に出ると、向こうから田...

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