第193章

「隆一、君が何を気にしているのか分かっている」

白石昌治は年上の立場にもかかわらず、思わず彼の後を追いかけた。

レストランの廊下には誰もおらず、彼は高橋隆一の行く手を遮った。

「君が知子を愛していないことは分かっている。婚約を解消すれば、夏美さんと一緒になれる。私は一切口出しはしない」

「大選のことも心配しなくていい。朝子がしっかり生きていれば、婚約がなくても白石家は君を支持し続ける」

高橋隆一の瞳が一瞬揺らいだ。彼は足を止め、かつては意気揚々としていた目の前の男を見つめた。

「さすがは良き父親だな。娘の幸せを取引材料にするとは」

こんな条件を出されて、高橋隆一の心に迷いがなか...

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