第197章

病院の廊下には緊張と不安が満ちていた。

藤原朝子のベッドが検査室から押し出されてきた。医師の表情は明らかに芳しくない。

白石昌治は額に汗を浮かべながら、思わず医師に駆け寄った。

「先生、彼女の容態は悪化していますか?」

医師は溜息をつき、手を振って患者をまず病室に運ぶよう指示した。

「正直に申し上げますと、白石奥さんの病状が発見されたのが遅すぎました。化学療法を施しても長くは持ちません。寿命はせいぜいあと一ヶ月です」

その言葉は青天の霹靂だった。白石昌治はよろめき、ほとんど立っていられなかった。

「一刻も早く適合する骨髄ドナーを見つけなければなりません。さもなければ、神様がいら...

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