第32章

彼女は驚きでまだ落ち着かないまま、角に身を縮こませていた。

鈴木夏美はずっと知っていた。高橋隆一が妹の死で大きなショックを受け、執念とも言える状態になっていることを。

でも今さっき、高橋隆一は本当に彼女を殺そうとした。妹の供養として彼女を殺し、その後自分も一緒に自殺するつもりだった。

そんな恐ろしい考えに、鈴木夏美は思わず震えた。

彼女は本当に怖かった。

電話をかけたばかりだから、真野雅子が飛んできたとしても、こんなに早く到着するはずがない。

遠くの雪原が明かりに照らされ、白く輝いていた。

高橋隆一はビジネス界で長く活躍してきた人だ。簡単にだませるはずがない。もしかしたら、彼女...

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