第325章 子供には父親が必要だ

森本先生は言葉を濁したが、鈴木夏美には痛いほど分かっていた。これが最後だ、と。

次があれば、鈴木純平が助かる保証など、もう誰にもできないのだ。

それからの日々、夏美は趣味の一切を断ち切り、ただひたすらに鈴木純平の傍らで語りかけることだけに時間を費やした。

季節は移ろい、いつしか秋が訪れていた。

海を臨む庭で茶を啜る夏美の肩に、斎藤蓮がふわりとショールを掛けた。「もう秋ですね。冷えますから、暖かくしていただかないと」

夏美の瞳が一瞬、遠くを見るように揺らぐ。庭に舞い落ちる枯葉を目にして、ようやく季節の変遷を実感した。

「……時間が経つのは早いわね」

この数ヶ月、鈴木純平の容態に劇的...

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