第348章 全てを忘れる

訓練基地に足を踏み入れた当初、鈴木夏美の顔には濃いカモフラージュが施されていた。

だが、あの人体用ペイントは水に弱かった。川から這い上がった今、古銅色の塗料は跡形もなく消え去り、その下から透き通るような白い肌が、まるで発光しているかのように露わになっていた。

長い髪が肩に張り付いている。濡れて頭皮に密着していても、彼女の美貌がいささかも損なわれることはない。

鈴木夏美は陽の光に目を細め、淡い色の瞳に諦めの色を浮かべた。

「お兄さん、私が悪かったわ。本当によ。だから見逃してくれない?」

ここに来た時から、鈴木夏美は分かっていた。高橋隆一の独占欲の強さを考えれば、訓練を最後まで全うさせてく...

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