第38章

小林正幸は二人の関係を知っていた。彼のこの一言は、高橋隆一への一方的な宣戦布告に等しかった。

鈴木夏美は手を強く握りしめた。彼女は高橋隆一の占有欲をよく知っていた。

たとえ離婚したとしても、彼は自分が他の男と付き合うことを許さないだろう。自分を永遠に孤独の中で生きさせたいのだ。

二人には共通の友人が何人かいる。このことが広まれば、高橋隆一は間違いなく面目を失うだろう。

もし彼が取り返しのつかないことをしたらどうしよう?

鈴木夏美は板挟みになっていた。一方には何度も助けてくれた小林正幸、もう一方には身分さえ公にできない元夫の高橋隆一。

「もちろんいいわよ」真野雅子は彼女の困惑を察し...

ログインして続きを読む