第380章 回想

柴田結衣は信じられないという顔をしていたが、桜井蘭に退席を促されては、これ以上そこに居座る厚顔さは持ち合わせていなかった。彼女は逃げるように別荘を飛び出していった。

鈴木夏美にとって、桜井蘭が助け舟を出してくれるとは予想外だった。最大の懸念事項だった柴田結衣が去り、食卓の空気は幾分軽くなったものの――。

高橋隆一は黙々と食事を続けている。桜井蘭も彼に話しかける様子はなく、母子でありながら会話は皆無だ。

奇妙な沈黙に居心地の悪さを感じた夏美が、何か話題を探そうと箸を動かした瞬間、桜井蘭の気怠げな声が響いた。

「外であれだけ食べてきたのに、まだ入るの? お腹を壊すわよ」

別荘の執事である...

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