第383章 希ちゃん

鈴木夏美は力なく反論した。

「そんなことないわ、もう乾かしたし」

「まだ毛先が濡れている」

ドライヤーの熱風が彼女の髪を優しく撫でる。鈴木夏美は鏡を見ることさえためらわれた。そこに映るであろう、彼の剥き出しの肌を目にするのが怖かったからだ。

耳障りな風音に紛れ、鈴木夏美は堪えきれずに問いかけた。

「私たちの間に、私の知らない何かがあったんじゃない?」

背後に密着していた体が強張る。高橋隆一の声が、ほとんど耳元で囁かれるように響いた。

「ああ、勘付いたか?」

彼は自己暗示をかけ続けているようだったが、鈴木夏美にははっきりと分かっていた。自分は、高橋隆一に対して「この人でなければならない...

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