第388章 普通で自信過剰

「あのろくでなしのせいでなければ、実家と縁を切ったりなんてしなかったわ」

 往時を語る桜井蘭の表情に怨恨の色はなく、あるのはただ、生理的な嫌悪のみだった。

「私も高橋修二のあの顔に目がくらんでいたのよ。当時、実家があの男の本性を知って結婚に反対したんだけど、私は聞く耳を持たなかった。愛のためなら何もいらないなんて言って、家族さえも捨ててしまったの」

 桜井蘭の父と母――桜井夫妻は激怒して彼女と絶縁したものの、経済的な面で彼女を冷遇することは決してなかった。

 鈴木夏美も少しは事情を知っている。

 桜井蘭は桜井家の末娘であり、幼い頃から蝶よ花よと育てられた。高橋修二に嫁いだ後も、桜井家か...

ログインして続きを読む