第390章 奇遇

鈴木夏美はただ社会勉強になったと感心するばかりで、桜井蘭の瞳の奥に潜む懸念には全く気づかなかった。

彼女は浅野舞という人間を知らない。二人が顔を合わせるのは、これが初めてだったからだ。

浅野舞の装いは富裕層そのもので、手入れも悪くない。だが、桜井蘭と比べれば雲泥の差だ。高橋修二は盲目でもないはずなのに、なぜあの大美女を捨てて、小作りな顔立ちで地味な浅野舞を選んだのだろうか?

「浅野舞の実家は貧しくてね。ずっと山奥の村で、酷い環境で育ったのよ。彼女の唯一の切り札は、そのまあまあ見れる顔だけ」

そう語る桜井蘭の表情には、同情の色しか浮かんでいない。

「貧乏を経験しているから、普通の人より...

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