第40章

小林正幸の裏切りと別れ、鈴木夏美は顔をそむけ、彼の触れようとする手を拒んだ。

ここ数日、鈴木夏美の容態は以前よりずっと良くなっていた。ただ、さっき冷たい風に当たったせいか、唇が少し蒼白になっていた。

「人殺しまでしようとしているのに、私が抵抗したところで意味あるの?」

彼女の明らかに良くなった顔色を見て、高橋隆一の胸の内にあった緊張感が不思議と霧散していった。

「この数日、体の調子は良くなったのか?」

以前見た鈴木夏美の腕の傷を思い出し、高橋隆一の瞳に後悔が一瞬よぎった。

彼は傷を直接見ていなかったので、鈴木夏美の具体的な状況は分からなかったが、彼女の顔色を見る限り、問題はなさそ...

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