第412章 からかい

以前なら誰も口にしないようなお世辞の数々。浅野舞は相槌こそ打たなかったが、その甘美な響きにすっかり酔いしれていた。

 彼女はわざとらしく溜息をつき、謙遜して見せた。

「皆さん、よしてちょうだい。蘭お姉様だって素晴らしい方なんだから……」

 その言葉が言い終わらないうちに、周囲の喧騒がピタリと止んだ。

 高橋のお爺様が、桜井蘭に車椅子を押されて姿を現したのだ。その傍らには、鈴木夏美も控えている。

 三人が登場した瞬間、会場中の視線が吸い寄せられ、誰もが桜井蘭に釘付けになった。

 さっきまで浅野舞にしてきたお世辞はどこへやら。中には、愛されていない女がどれほど綺麗になれるものか、と桜井...

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