第419章 汚らわしい

「今、何と言った?」

 高橋修二の驚愕に満ちた眼差しを受け、浅野舞は瞬時に我に返ると、すぐさまあの楚々とした哀れっぽい表情を張りつけた。

「わ、私、ちょっと焦っちゃって、言葉を間違えちゃっただけなの。修二お兄ちゃん、気にしないよね?」

 浅野舞は狼狽した様子で、不安げな視線を高橋修二へと向ける。

 高橋修二は大きく息を吸い込んだ。長年連れ添ってきた女が、まさかこれほどまでの人間だったとは信じ難かった。

 この茶番劇の幕引きを冷ややかな目で見届けていた鈴木夏美は、これ以上立っているのも億劫になり、別荘に戻って少し休もうと身を翻した。

 足を踏み出したその時、小林正幸が歩み寄ってきた。...

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