第420章 死と解脱

彼女の口元から溢れ出す鮮血は、一向に止まる気配を見せない。それどころか、その勢いは刻一刻と増していくばかりだった。

 高橋隆一の両目は血走っていた。震える手で彼女を掻き抱き、喉を引き裂くように咆哮する。

「何をしている! 突っ立っていないで早く医者を呼んでこいッ!」

 その怒声に弾かれたように、田中雄介が駆け出した。別荘に残された者たちが顔を見合わせる中、桜井蘭がおずおずと歩み寄る。

「隆一、夏美さんは……いったい何の病気なの?」

 高橋隆一の指の隙間は、べっとりと鮮血で濡れていた。鈴木夏美を抱きしめる腕の力を緩めることもできず、彼はただ無力に首を横に振る。

「……わから、ないんだ」...

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