第421章 命を捨てる

鈴木夏美は病室に運ばれ、栗原伸昭もまた、飛行機で急ぎ駆けつけてきた。

病室の一角にある個室スペース。栗原伸昭は分厚い資料の束を手にし、それを二人の前にあるテーブルへと慎重に置いた。

「病院から取り寄せたカルテです。奥様は以前、小林正幸先生のもとで治療を受けておられました。その時すでに、癌の診断が下されていたのです」

資料の記載は残酷なほど明瞭だった。当時の鈴木夏美の検査結果には、胃部に腫瘍性病変の疑いありと記されている。しかも進行度はステージⅢ。身体の状態は、すでに極めて悪化していた。

高橋隆一は、その資料を一枚一枚めくっていく。その指先の動きは、ひどく緩慢だった。

羅列された文字を...

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