第428章 私はあなたが憎い

「あの人の前に立つと、いつも自分が惨めな存在に思えてくるんです」

 鈴木夏美が無意識に漏らしたその言葉を、小林正幸は意外にも肯定した。

「あの頃の話になると、君はまるで別人のようだったな。僕の印象にある君は、いつだって自立した強い女性だった。それが一人の男のために、あそこまで卑屈になれるとは思いもしなかったよ」

 その言葉に、鈴木夏美は思わず問い返す。

「先輩でさえ、私があの人と一緒にいるべきじゃないと思うんですか?」

「それは君たちの間の感情の問題だ。僕がとやかく言うことじゃない」

 小林正幸は明言を避けた。鈴木夏美もそれを理解していた。かつて彼も二人の関係に巻き込まれた一人だ。よ...

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