第5章

鈴木夏美は白石家の別荘を出た後、失意に満ちて通りを歩いていた。

空から突然小雨が降り始め、風も吹いてきた。鈴木夏美の痩せた体は、その風に吹かれてよろめいた。

今の彼女には目的地などなかった。すべての方向感覚を失ったかのように、どこへ行けばいいのかわからず、ただ道に沿って歩き続けるだけ。雨が彼女の体に降りかかり、服を濡らしていくのに身を任せていた。

一日中の疲労と、何も食べていないこと、そして病の苦しみが重なり、鈴木夏美はついに限界に達していた。見知らぬ通りに辿り着いたとき、意識がぼやけ始め、そのまま路肩に倒れ込み、もう立ち上がることができなくなった。

完全に意識を失う直前、鈴木夏美は...

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