第53章

鈴木夏美は彼の前で負けを認めたくなかった。お父さんの病気も彼女に後退を許さなかった。

彼女は二杯目の酒を手に取り、諦めたかのように、一気に喉に流し込んだ。

全身の血管が痙攣し始め、鈴木夏美の手が微かに震えた。

「パタン」という音と共に、酒杯が床に叩きつけられ、粉々に砕け散った。

鈴木夏美の体が一瞬固まり、まっすぐ前のめりに倒れていった。

バーカウンターのテーブルは角ばっていて、鈴木夏美は既に痛い思いをする覚悟をしていたが、思いがけず誰かの腕の中に落ちた。

「高橋社長?」

周囲から驚きの声が上がる中、高橋隆一は彼女を抱きかかえて大股で出ていった。

鈴木夏美の意識は朦朧としていた...

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