第60章

「高橋社長がその気なら、私も断れないわ」

彼女はただ惨めな姿を見せたくなかった。高橋隆一に自分の弱さを悟られたくなかったのだ。

笑顔はいつもと変わらず甘いのに、その口から出る言葉は人を殺しかねないほど鋭かった。

高橋隆一の指が彼女の顎をきつく掴み、彼女の目は澄んでいた。

不思議と、彼はこの感覚が懐かしく、頭を下げてキスをした。

鈴木夏美はただ言葉で彼を挑発しようとしただけだったのに、言い終わるや否や、唇が思いがけず塞がれてしまった。

高橋隆一の息は温かく、体からはミントとタバコの香りが混ざり合い、言いようのない魅力を放っていた。

鈴木夏美の頭は彼の大きな手に押さえつけられ、体は...

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