第64章

「もう十分だ。信也のお母さんとして、あなたは彼を気にかけるどころか、責任を他人に押し付けようとしている。少しでも母親らしいところがあるのか?」

普段の些細な揉め事なら、高橋隆一は関わりたくなかったが、今は高橋信也の健康問題に関わることだ。彼は傍観者でいるつもりはなかった。

鈴木夏美は傍らに立ち、少し安堵していた。

白石知子の人柄は前から知っていたが、こんなにひどい人だとは思っていなかった。

信也が痛みで苦しんでいるというのに、白石知子にとっては高級なドレスの方が大事なのだ。

床に散らばった衣服を見つめながら、高橋隆一の瞳の色が徐々に濃くなった。

彼はもう見るに堪えず、高橋信也の小...

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