第70章

藤原朝子が迷わず白石昌治についていった時、自分は娘がいることさえ思い出さなかった。

白石知子を守り育てる間も、彼女は自分自身をないがしろにし続けた。

鈴木夏美は鼻をすすり、もしお父さんがまだ生きていたら、彼女と藤原朝子との距離を置くことに賛成してくれただろうか?

下で渦巻く荒々しい海を眺めながら、行き交う人々を冷ややかな目で見つめていたが、何の感情も湧いてこなかった。

あるのは、さっき藤原朝子の怒りを目の当たりにした時の感情だけ。

もはやこの状況になって、愛情も家族の絆も必要としていないのに、この人たちはまるで追い払えないハエのように、わざわざ寄ってくる。もし彼らが少しでも早く後悔...

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