第78章

千野俊吾は恐怖で呆然としていた。地面に蹲り、絶え間なく震えている。

その時、田中雄介が近づいてきた。

「高橋社長、鈴木さんの携帯の位置情報が海で消えました」

これは彼らが陸に戻るつもりなど全くなく、海路で逃げる気だということを意味していた。

手掛かりは完全に途切れてしまった。

白石知子はこの時、涙を二滴絞り出した。

「絶対に鈴木夏美の仕業よ。彼女が最近何をしていたか徹底的に調べて。できれば鈴木純平を病院から連れ出して。そうすれば彼女は必ず戻ってくるわ!」

彼女の口調は、まるで鈴木夏美もこの事件の被害者だということを知らないかのようだった。

高橋隆一は白石知子の目を見つめ、その...

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