第10章

相馬千冬は、全身の血が沸騰するのを感じた。

伊東逢己が隣で何か言っていたが、相馬千冬の耳には一切入ってこなかった。彼の全身の細胞が、ただ一つの想いだけを叫んでいた。

彼女を引き止めろ。

絶対に、逃がすな!

相馬千冬の表情は、一瞬にして自制を失い、崩れた。

彼はなりふり構わず、大股で駐車スペースへと走り出した。

素早くドアを開けて乗り込み、エンジンをかける。相馬千冬はアクセルを床まで踏み込み、安井綺世の車が消えた方向へ向かって猛然とダッシュした。

車内。

安井綺世はちょうど安井初幸に電話をかけたところだった。彼女は何でもないような口調を装って尋ねた。

「初幸、二人とも今日はホ...

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