第135章

電話の向こうで、辻本修一は少し躊躇った末、観念したように認めた。

「実はな、もし君が恋人のふりをして見合いを断ってくれたら、母もしばらくは大人しくなると思うんだ」

「心苦しいお願いだとは分かってる。ただ、当分結婚するつもりはないし、見合いに行っても相手の女性の時間を奪うだけで申し訳ない。最初から母さんの期待を断ち切ったほうがいいと思ってね」

安井綺世は沈黙した。反射的に断ろうとしたが、辻本修一には日頃から助けられているし、子供たちの面倒もよく見てくれている。

長年、彼には数え切れないほど世話になってきた。

だが、恋人のふりとは……。

綺世はそのやり方に賛同できなかった。

彼女は...

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