第161章

安井綺世の手に握られた巨額の遺産を示す書類。それを目にしても、相馬の爺さんは最初こそ感慨深げな様子を見せたものの、そこには微塵も欲の影などなかった。

彼は書類を綺世に返すと、優しく諭すように口を開いた。

「これはお前の両親が残してくれた財産じゃ。あいつらも、この金でお前に幸せな人生を送ってほしいと願っておるはずじゃよ。お前自身はどう考えておる?」

彼のこうした反応など、綺世にはとうに分かっていたことだ。それでも実際にその温かな態度に触れると、自然と唇がほころび、慕情に満ちた眼差しを向けてしまう。

やはり、お爺様は心から私を案じてくれている。

そうでなければ、あんな絶望的な状況で私を...

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