第172章

安井綺世は全身を強張らせた。相馬千冬に触れられた半身が痺れ始め、頭の中がしばらく真っ白になった。

入り乱れる思考の中、一瞬、今が夢なのか現実なのかすら分からなくなる。

相馬千冬は安井綺世がまだ眠っていないことに気づくと、腕の力を強め、彼女をすっぽりとその胸に抱き寄せた。柔らかい髪の頂に親しげに顎を乗せ、軽く匂いを嗅ぐと、彼が放っていた冷ややかな気配がふっと和らいだ。

彼は安井綺世の腰を抱き寄せながら囁く。

「話したくないのか? なら、寝よう」

安井綺世はハッと我に返った。全身を張り詰めさせ、相馬千冬を力任せに突き飛ばす。

無防備だった相馬千冬は、そのまま突き放された。腕の中から温...

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