第22章

翌日、雲翔ビル。

安井綺世は風久投資へ提出する資料をまとめ終え、ふと顔を上げると、入り口に辻本修一が立っているのが目に入った。

「本当に雲翔に入る気はないのか?」

安井綺世は椅子の背もたれに掛けていたコートを手に取りながら答えた。

「辻本社長が提示してくださった条件なら、もっと優秀な人材を雇えます。私なんかに使うのはもったいないですよ」

辻本修一が提示した条件は、間違いなく業界トップクラスの水準だ。正直なところ、安井綺世も心が揺らいだのは事実だった。

だが、唯一の欠点であり、彼女が繰り返し誘いを断る理由が一つだけあった。

それは、本社が川城にあるということだ。

安井綺世が今回...

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