第31章

 安井綺世には、この屋敷の中に自分の部屋というものが存在しなかった。

 二階へ避難するという名目だったが、実際には相馬千冬が皐雪のために用意した部屋に入ったに過ぎない。

 あの夜は部屋の様子をじっくり見る余裕などなかったが、今日改めて足を踏み入れると、部屋の隅にうず高く積まれたぬいぐるみの山が目に飛び込んできた。

 安井綺世は乱れる心を落ち着かせ、淡いピンクの絨毯の上にあぐらをかいて座り込んだ。

 ドアノブがガチャガチャと音を立てる。どうやら相馬千冬が外から開けようとしているらしい。

 だが、入室と同時に内鍵を掛けたため、そう簡単には入ってこられないはずだ。

 彼女は壁際のふかふ...

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