第37章

安井綺世はスマートフォンの画面をスクロールさせていた指を、ぴたりと止めた。

辻本修一の平然とした様子を見るに、どうやら彼はこのレストランの「性質」を知らないらしい。

「辻本社長、やはり店を変えませんか? ネットの口コミによると、ここはカップル向けだそうで……」

辻本修一は安井綺世に視線を向けた。

「評判がいいと聞いてね。社内でも勧める声が多かったんだ」

「ですが……」

「カップル向けというのは単なる客寄せの文句だろう。恋人同士でなければ入店禁止という規則があるわけでもない」

辻本修一は、反論の余地がないほどもっともらしい理屈を並べた。

そのあまりに気にしていない様子を見て、安...

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