第57章

三千万ドルだ。

三万でも三十万でもない。なんと三千万ドルもの巨額である。

菊池夏菜はデスクをバンッと叩き、勢いよく立ち上がった。「辻本社長! 部下の管理不行き届きにつきましては、財務部内部の問題として私が責任を取ります」

「ですが、安井綺世にチーフ・ファイナンシャル・アナリストを務めるだけの能力があるとは思えません。今回の件で、彼女の勤務態度と能力に重大な欠陥があることは明白です」

菊池夏菜は安井綺世を睨みつけた。お前のせいで私が恥をかいたのだと言わんばかりの目だ。

安井綺世は視線を落とし、資産分析書の数字を再確認する。

桁も漢数字も間違いない。誰かが悪意を持って改竄したわけでは...

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