第54章

相馬千冬の口調に、安井綺世の体は強張った。

背筋を這い上がるような悪寒と緊張。無理やり唇を奪われた時の動悸が、まざまざと蘇る。

重なり合った体を通して、相手の変化はすぐに伝わってくる。

だが、相馬千冬に予想していたような反応がないことに気づき、彼女は密かに安堵の息を吐いた。至近距離にある彼の顔から視線を逸らし、眉を顰めて顔を背ける。

「放して」

千冬は聞こえないふりを決め込み、余裕たっぷりに二人を覆う布団に目をやった。

小さく溜息をつくと、瞳を閉じて静かに言った。

「ちょうど俺も眠い。ベッドが嫌ならここでも同じだ。寝よう」

外では雷鳴が轟いているというのに、彼は呼吸を整え、綺...

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