第67章

相馬千冬は感慨深げに二歩進み出ると、安井綺世に声をかけた。

「もっとこうしていればいいのに。昔みたいにさ」

安井綺世の笑みが、ふと強張り、凍りついた。

彼女は相馬千冬に適当な言葉を返してその場を濁すと、二人の子供に向き直った。

「もう遅いし、そろそろ寝る時間よ。ホテルに戻りましょうか」

子供たちはそれぞれウサギのぬいぐるみを抱きしめ、素直に頷いた。

安井皐雪が、持っていたウサギを安井綺世の胸に押し付ける。

安井綺世は、未練などないといった様子の娘を不思議そうに見つめた。

「皐雪はウサギさんが好きじゃないの?」

いつもは天真爛漫な安井皐雪だが、今日の眼差しは妙に真剣で、はっき...

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