第295章

何度か意識の浮上を試行錯誤した後、彼はようやくその瞼を持ち上げた。

視界が鮮明になると、まず目に飛び込んできたのは、ベッドの脇に突っ伏して深く眠りこけている皐月夏帆の姿だった。

その光景を目にした篠宮湊の口元に、蒼白ながらも穏やかな笑みが浮かぶ。

皐月夏帆と知り合ってからというもの、彼女は常に刺々しく、自分に対して冷ややかな態度を崩さなかった。

そんな彼女が、こうして子羊のように大人しく、自分のそばで無防備な寝顔を晒している日が来ようとは。以前の彼なら想像すらできなかっただろう。

篠宮湊の胸の内に、じわりと喜びが広がっていく。

彼は鉛のように重い腕を懸命に持ち上げ、そっと皐月夏帆...

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