第302章

意識が朦朧としていた皐月夏帆は、その瞬間、ハッとしたように正気を取り戻した。

彼女はドアの方を指差し、篠宮湊に告げる。

「ドア……ドアを……」

篠宮湊はそこでようやく我に返った。廊下からの足音が皐月夏帆の部屋に近づいてくるのが聞こえる。彼は勢いよく足を上げ、バンッという音と共にドアを蹴り閉めた。

次の瞬間、彼は片手で皐月夏帆の身体を抱き寄せたままドアの前に移動し、カチャリと鍵をかけた。

そして、流れるような動作で部屋の照明を落とす。

闇に包まれた室内。閉められていないカーテンの隙間から月光が差し込み、それが部屋の中に言いようのない艶めかしい雰囲気を醸し出していた。

篠宮湊は顔を...

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