第38章

彼女が言葉を切り上げたちょうどその時、スタッフへの指示を終えた黒川社長が戻ってきた。

黒川社長は篠宮湊の言葉を聞いていなかったようで、親しげに篠宮湊の肩をポンと叩いて言った。

「篠宮社長、確かお嬢さんの執刀をエマ先生に依頼したいと仰っていましたな?」

「カルテはお持ちですか? 皐月補佐に見せるといい。本日は手術費が半額になりますからな」

篠宮湊は黒川社長に軽く会釈を返すと、手提げ袋から夢のこれまでの診療記録を取り出し、皐月夏帆のもとへと歩み寄った。

皐月秋雨はその動きを阻止しようとしたが、篠宮湊の頑固な気性を熟知しているだけに、今は事の成り行きを静観することを選んだ。

時を同じく...

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