第42章

篠宮湊が声を潜めたのは、事を荒立てたくないという一心からだった。だが、皐月秋雨の腹積もりは違った。

彼女は、先ほど皐月夏帆が夫人たちを引き連れて自分を嘲笑ったことをぶちまけ、篠宮湊に仇を討ってもらおうと考えていたのだ。

「湊、あの皐月夏帆、本当に酷いのよ。私がこんな無様な姿になったのも、全部あの子のせいなんだから」

皐月秋雨は顔を両手で覆い、しくしくと泣き崩れた。その姿は、いかにも被害者といった風情だ。

「彼女がどうした? 苛められでもしたのか?」

篠宮湊が問い詰める。

秋雨はただ泣くばかりで何も答えない。その涙に濡れた可憐な姿は、瞬く間に彼女を「弱者」へと仕立て上げていく。

...

ログインして続きを読む